初めて車を査定するとなれば緊張しますし、不安もあります。どこで売ればいいのか、何を用意すればいいのか、分からないことだらけです。査定から売却まで、覚えておくと便利な基本と流れを紹介します。
車を売る方法
車を売る方法は大きく分けて3種類あります。
まずは中古車買取業者への売却です。単に買取をするだけのところもあれば、販売を兼ねているところもあります。買い取った車は中古車として再販したり、業者間オークションで流通させたり、海外へ輸出したりするなどです。利益を出す方法が多いので、比較的高値がつきやすい傾向があります。売却代金の使い道に制限は無いので、車を現金化したいときに便利です。
中古車買取り業者に売却する時
中古車買取業者へ売却するときは、最初に査定を行います。車を店頭に持ち込むだけでなく、予約した日時に指定した場所まで来てもらうことも可能です。査定が終わったら買取価格が提示されるので、納得いくまで交渉しましょう。合意に至れば手続きを行い、車を売却します。もちろん断っても構いません。査定額は車のコンディションを基本として、中古車市場での需要や相場も考慮されます。
ディーラーに下取りに出す
次はディーラーの下取りです。査定額は新車を購入するときの値引き額となり、現金で受け取ることはできません。下取りした車は業者間オークションで流通させるのがほとんどで、中古車として販売できるディーラーは少数です。査定はディーラーへ車を持ち込んで行います。査定の基準は中古車買取業者と変わりませんが、ほかのメーカーの車は低い査定額になりがちです。また、新車の値引き額には限度があるので、中古車買取業者で高値がつく車ほど低い下取り額になる傾向があります。
逆に、中古車買取業者では値がつかないような車でも、下取りという名目で新車を値引きされるなら、結果としてお得です。新車を直接値引きするのはブランドイメージを損なう恐れがありますが、下取りならその心配がありません。また、ディーラーは車の売却と新車の購入が1ヶ所でできます。1人の担当者がすべての手続きを代行してくれるので、必要な書類を用意するだけです。ローンを組んでいる最中でも、完済せずに新たなローンを組んで乗り換えられます。
オークションで個人売買する
最後に、オークションなど個人間の売買です。売却額は双方が話し合って自由に決められます。相手を説得できれば、ほかの2つよりも高値で売れるかもしれません。けれども、責任の所在を明確にしないと、後で故障が発生したときに揉める原因となります。売却する相手が車の売買に詳しくないと、必要な手続きを怠って、自動車税を引き続き請求されるなどのトラブルに見舞われるかもしれません。
ほかにも、売却代金を支払わずに連絡が取れなくなるケースもあります。中古車買取業者やディーラーに売却するよりもリスクは大きいといえるでしょう。
車買取店選びのポイントは
同じ中古車買取業者でも、得意とする車種や車の状態は異なります。コンパクトカーや軽自動車などタウンユースの車に強いところ、ミニバンやSUVなどファミリーカーに強いところ、高級車に強いところ、輸入車に強いところなどです。スポーツカーや改造車など、特定のマニアに向けた車に強いところもあります。
車の買取に強い廃車買取業者とは
近年、その数を増やしているのが廃車買取を専門とする業者です。年式が古かったり、走行距離が多かったり、修復歴や水没歴があったりするなど、一般的な中古車買取業者では値がつかないような車を0円以上で買い取ります。車の引き取りや廃車の手続きに関する費用も無料です。買い取った車は修理して中古車として再販したり、海外へ輸出したりするだけでなく、解体してスクラップを売却したり、再利用できる部品を販売したりするなどします。利益を出す方法が豊富にあるため、0円以上で買い取れたり、車の引き取りや廃車の手続きに関する費用を無料にできたりするわけです。
自分で廃車しようとすると、車を解体業者へ運搬したり、運輸支局（軽自動車は軽自動車検査協会）で手続きしたりする手間が発生します。費用は最大で10万円近くかかるかもしれません。それなら、廃車買取業者に依頼するほうがお得です。このように、中古車買取業者はそれぞれ得意とする車種や車の状態があるため、同じ車を査定しても、評価は大きく異なります。そのため、中古車買取業者に売ろうとするなら、1つだけでなく複数の業者に査定を依頼するのがおすすめです。
車査定のチェックポイント
車の査定では、車のコンディションや装備、年式、走行距離などをチェックします。目安となるのは、JAAI（日本自動車査定協会）が発行するハンドブックです。
整備して再販出来る価格から査定価格を算出
まずは、一般的な整備をした上で販売するときの小売価格を査定の基準価格にします。そこから整備にかかる費用や経費、利益を引いたのが基本価格です。さらに標準状態と比較して劣るところを減点、優れているところを加点して算出されたのが最終的な査定額となります。1点につき1,000円相当です。標準状態とは外装・内装とも無傷であり、エンジンや足回りに支障がなく、修復歴や改造歴がない状態を指します。車検の残月数は3ヶ月以上であり、タイヤの溝は1.6mm以上、年数に応じた走行距離です。例えば、ボディーは1cm以上の傷やへこみがあると減点されます。1cm未満であれば自然にできるものとして、減点はされません。ほかにも修理や板金、塗装の必要があれば、その規模に応じて減点されます。
内装は規定のものであり、汚れやシミ、破損が無いのが標準です。マット類は揃っており、異臭がしてはいけません。だから、タバコやペット、芳香剤の臭いが残っているのは大きく減点されます。タバコはヤニ、ペットは毛が付着しているのも大きく減点される原因です。いずれも該当すると120点（12万円）の減点になります。
走行距離は、新車登録からの年数に応じて、標準となるキロ数が変わる仕組みです。点数ではなく、先ほどの基本価格から一定の割合を加減します。同じ5万km走っても、6年目と7年目（61～84ヶ月）は標準であり、加減はありません。それより短い年数であればマイナスですし、長い年数であれば逆にプラスです。仮に減らされるのが5％なら、基本価格が100万円の車は5万円減らされて95万円になります。
車種や登録年数によって加点減点ポイントも異なる
ただし、マイナスやプラスの幅はすべての車で同じではありません。車種や新車登録からの年数によって係数がかけられます。車種でいえば、200万クラスの車が基本です。それより高級になるほど係数は大きく、コンパクトカーや軽自動車になると逆に小さくなります。例えば最高級クラスの車は、同じ減点・加点でも200万クラスの2.2倍です。
また、新車登録からの年数でいえば、1～3年目までが基本となります。4年目から小さくなりはじめ、6年目以降はすべて基本の0.7倍です。なお、JAAIの基準は、あくまでも目安であり、絶対ではありません。何らかの理由があって、違う査定になる場合もあります。
例えば、走行距離は標準よりもキロ数が短いと一定の割合がプラスされ、2年目以降であれば、5,000km未満は一律20％プラスです。けれども、年数の割に走行距離が少ない車は、部品が劣化している可能性があり、故障する確率が高くなります。例えばゴムが硬くなったり、金属が錆びたりするなどです。そのため、実際の査定ではマイナスになります。
また、オプションも評価されるのは製造時にしか取り付けられないメーカーオプションが中心で、後付けできるディーラーオプションはそれほどでもありません。社外オプションに至ってはマイナスになる場合もあります。ただし、特定の車種に強い中古車買取業者であれば、高く評価してくれるかもしれません。
車を高く売るコツ
車は何の考えも無しに売ってしまうと、安値で買い取られがちです。高く売るためにはコツがあります。
まず、査定を依頼するときは1つではなく、複数の業者に依頼しましょう。業者の数が多いほど互いに競争意識が働いて、より高値をつけてくれるかもしれません。特に中古車買取業者は、車を再販できなければ利益を出せませんから、どこも在庫の確保に必死です。
複数の業者に相見積を取ると
複数の業者に査定を依頼するとなれば、1つずつ予約して対応して、交渉しなければいけません。2つや3つならともかく、それ以上になると面倒になって、適当なところで妥協しがちです。そこで、最初はメールや電話でおおまかな査定額を問い合わせて、納得できる価格をつけてくれた業者だけに査定を依頼します。その査定も一度に複数の業者を立ち会わせる「同時査定」が可能です。何度も業者を呼んで査定させる手間が省けます。買取価格の提示を入札形式にすれば、高値をつけた業者を選べるのはもちろん、相性の良くなさそうな業者の除外も難しくありません。
車を売るタイミングも狙うこと
車を売るタイミングも重要です。車の需要には波があり、高まっているときに売れば高値がつきやすくなります。逆に低くなりそうなタイミングで売れば、損するのを防げるでしょう。
例えば、車の需要が高まるのは毎年3月です。進学や就職で環境が変わる人が多く、車も必要になります。しかも中古車買取業者の多くは決算月ですから、利益を出そうと買取に力を入れるでしょう。この時期に車を売れば、ほかの時期より高値がつくかもしれません。また、4月まで車を保有すると、1年分の自動車税を請求されるので、3月は手放すのに絶好のタイミングです。同様に9月も人事異動があり、多くの中古車買取業者にとっては中間決算期でもあります。
ただし、車は買い取られてすぐ店頭に並ぶわけではありません。業者間オークションを経由すると、さらに時間がかかります。また、3月や9月は業者が忙しくなるため、必要な手続きが後回しになるかもしれません。月末に売ると思ったほどの買値がつかなかったり、手続きが遅れて自動車税が請求されたりする恐れがあります。そのため、少し余裕を持って前月から月初めにかけて売るのが理想です。
モデルチェンジ前は売り時？
ほかに最適なタイミングとしてはモデルチェンジの前があります。古いモデルは新しいモデルと比べて装備などが見劣りするからです。需要が少なくなるので買値も下がります。特にフルモデルチェンジは全面的に刷新されるため、大きく古いモデルの買値を下げる原因です。情報が出た時点で、売る用意をしておいたほうが良いでしょう。ただし、車によってはフルモデルチェンジが失敗するケースも少なくありません。逆に古いモデルの需要が高まり、買値が上がります。その場合は、評価が固まるのを待ったほうが良いでしょう。
使用年数や走行距離も査定に加味される
使用年数や走行距離も買値に影響します。JAAIのハンドブックでは使用年数に応じた走行距離で評価が決まりましたが、市場では単に走行距離だけで判断されるのが主流です。買値は1万km毎に下がり、5万km以上になると減額の幅は大きくなります。その後も緩やかに買値が下がり、10万km以上が次の節目です。年数でいえば、2回目の車検を迎えて大がかりな部品の交換が増える5年目で車を乗り換える人が増えます。3回目の車検を迎える7年目も同様です。そして10年目になると寿命が近いとみなされて、ほとんど見向きされません。けれども、実際は走行距離が10万kmでも年数が10年以上でも車はまだまだ現役で走れます。タクシーやバン、トラックなどの商用車は、部品の交換を経て30万km以上走っている車が少なくありません。
販路が多い買取業者なら査定額UPも見込める
たとえ国内で需要がなくても、海外では引き続き人気があります。特に日本車は元々の作りがしっかりしている上に、2年ごとの車検を受けているので高品質です。だから、海外に販売ルートを持つ業者なら高く買い取ってくれます。
純正の状態で売るのも高値をつけるコツです。そのほうがデザインに統一感があって選ばれやすいからです。社外品に取り替える場合は純正品を手許に残し、売るとき元に戻しましょう。付属品も揃えて欠品が無いようにします。JAAIのハンドブックでは保証書、整備手帳、取扱説明書の3つが揃っていると10点のプラスです。
売却が決まったら用意する書類
車の売却が決まったら、名義を業者へ変更するための手続きが必要です。手続きは業者が行ってくれますが、必要書類は自分で用意しなければいけません。
売却時に必要な書類
必要になるのは、車検証、納税証明書、自賠責保険証明書、リサイクル券です。さらに普通車であれば実印とその印鑑証明書、軽自動車なら認印を用意します。車検証の住所が現住所と異なれば住民票も必要です。
このうち、車検証、納税証明書、自賠責保険証明書、リサイクル券はひとまとめにして保管されているでしょう。万が一、紛失している場合は再発行しなければいけません。
車検証は普通車が運輸支局、軽自動車が軽自動車検査協会で再発行してくれます。再発行には身分証明書（普通車のみ）と印鑑、300円の手数料が必要です。納税証明書は普通車が都道府県の税事務所、軽自動車が自治体の窓口で再発行してくれます。ただし、近年はOSS（ワンストップサービスシステム）のデータベースで納税状況を確認できるため、業者や住んでいる地域によっては必要ないかもしれません。自賠責保険証明書は加入している保険会社の窓口で再発行してくれます。必要なのは印鑑と身分証明書です。再発行には1～3週間ほどかかります。リサイクル券は紛失しても再発行できず、自動車リサイクルシステムのWebサイトで「自動車リサイクル料金の預託状況」を印刷して代用します。ただし、新車購入時に支払っていないのであれば、リサイクル券は発行されておらず、預託状況も表示されません。業者にその旨を伝えましょう。印鑑証明書や住民票は自治体の証明書窓口で発行してくれます。手数料はどちらも300円です。最近はコンビニで発行できる自治体も増えており、その場合の手数料は200円になります。
用意できたら印鑑以外の書類を業者に渡し、譲渡証明書と委任状に必要事項を記入して押印すれば、名義変更の準備は完了です。それ以外に売買契約書を取り交わします。売却代金を振り込むための口座情報も伝えましょう。
売却前に車検証の名義はチェックしておく
一つ気をつけたいのが、車検証の名義です。ローンで車を購入していると、所有者の名義がディーラーやローン会社になっている場合があります。「所有権留保」といって、ローンを完済するまで変更できません。完済しても手続きしなければそのままです。変更するにはローンを完済して、所有者に所有権留保の解除を申し出ます。その上で車検証のコピーや納税証明書、完済証明書、実印を押した委任状、実印の印鑑証明書を送りましょう。車検証と現住所が異なる場合は住民票も必要です。
代わりに委任状と先方の印鑑証明書などが送られてくるので、車を売却する業者に渡します。売却するのがディーラーならば、手続きが簡単でローンの完済も不要です。
まとめ
車を売却する方法は3種類あり、そのうち中古車買取業者は車の現金化、ディーラーは車の乗り換えに向いています。査定額は業者によって異なるため、できるだけ多くの業者に依頼するのが高値をつけやすいコツです。ほかにも売るタイミングで買値が変動します。売却が決まると売買契約書を取り交わし、名義変更の準備をして完了です。
中古車買取業者は数多くあるため、どこを選んでいいのか迷ってしまいます。できるだけ情報収集して、車を高く買い取ってくれそうなところに査定を依頼しましょう。
