車検では飛び石によるガラスの傷はNG?

飛び石によって車のガラスに傷ができてしまうと、運転中に気になるだけでなく、車検に通らない恐れがあります。どれくらいの傷から車検に通らなくなるのでしょうか。修理の方法についても紹介します。

車検に通る場合も通らない場合もある

車のガラスについての基準は、「道路運送車両の保安基準」の第29条と「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の第195条で定められています。どちらも、道路運送車両法の第3章(第40~46条)を具体的に説明したものです。

これによると、時速40キロ以上で走る車のフロントガラスにできた傷は、運転手の視野を妨げず、貫通されていない状態でなければいけない、とされています。また、ひずみがなく、可視光線の透過率は70%以上でなければいけません。これは側面のガラスにも適用されます。

ところが、傷の大きさや形状、位置についての具体的な基準はありません。むしろ、検査標章や保安基準適合標章など、窓ガラスに貼るものに対する基準は細かく定められています。そのため、飛び石によるガラスの傷で車検に通るかは検査員の判断次第です。

貫通されていたり、可視光線の透過率が70%未満であったりすれば無条件で不合格になります。傷の大きさや形状、位置、ひずみ具合については、運転手の視野を妨げていると判断されれば不合格になるでしょう。

運転手の視野を妨げていると判断されやすいのは、フロントガラスの運転席側にできた傷です。たとえ正面より上のほうでも下のほうにあっても、不合格になりやすいでしょう。大きさは100円玉(直径22.6mm)以上が目安です。

形状は目玉のような形で、小さな亀裂がある程度なら合格する可能性はありますが、線状に亀裂が入っていると、助手席側であっても不合格になります。もちろん、小さな傷でも絶対に合格するとは限りません。車検前の点検や整備で、「このままでは合格しない」といわれたら、修理または交換したほうが良いでしょう。

飛び石によるガラスの傷は早めに対策を

たとえ車検に合格できたとしても、飛び石によるガラスの傷を放置してはいけません。運転しているときの風圧や振動、寒暖差などによって、傷は次第に大きくなります。

近年、車に使用されているガラスは、大半が合わせガラスや強化ガラスなので、割れたり穴が空いたりする可能性は、ほとんど無いかもしれません。けれども、運転中に視界を妨げると大変危険です。

また、傷が小さいうちは自分でリペアキッドを使って修復できたり、業者に修理してもらったりすることができます。その場合は、専門業者に頼むと良いでしょう。

ただし、大きくなると交換しなければいけません。当然、費用もかかります。早めに対処できれば、少ない費用で傷の拡大を防げるでしょう。

もし運転中に傷ができたら、車を安全なところに停めて状態を確認します。視界を妨げていたり、100円玉以上の大きさだったり、ヒビが入っていたりしたら、無理に運転しないで、ロードサービスを利用したほうが安心です。特に高速道路の運転は、スピードが出ているので風圧や振動が強く、割れたときのリスクも大きいでしょう。

修理するまでは、透明なセロハンテープを貼って保護すると、傷が広がるのを抑えたり、ゴミや汚れが入り込むのを防いだりしてくれます。

ガラスの傷はどのように修理する?

車のガラスにできた傷が1cm未満くらいなら、市販のリペアキッドで修復できるかもしれません。1,000~3,000円程度で販売されています。

傷に透明なUVレジンを注入し、紫外線を当てて固める仕組みです。注入するための注射器や、傷に流し込みやすくするための台座がセットになっています。事前にマスキングテープで傷の周りを養生しておくと、注入したUVレジンがあふれても広がりません。注入前に傷周りのゴミや汚れを取り除いておきましょう。

UVレジンを注入したら、30分から1時間ほど日光に当てて固めます。固まったら、余分なUVレジンをカミソリやコンパウンドなどで削って完了です。どうしてもUVレジンの注入口だけ、点状に跡が残ってしまいますが、それ以外は傷があったのか分からないくらい目立たなくなります。

ただし、この方法で修理できる傷の大きさや形状は限られるため、購入前は必ず注意書きに目を通しましょう。また、失敗するとかえって傷を大きくしたり、業者でも修理できず交換しなければいけなくなったりするので、自信が無ければ途中で止めたほうが無難です。

業者に依頼した場合は、傷の大きさや形状、位置によって、修理するか交換するか判断されます。一般的に傷の大きさが100円玉以下であり、えぐれていたり欠けていたりする傷ではなく、撥水などの特殊加工していないガラスなら修理できるかもしれません。位置は業者やガラスの種類にもよりますが、縁に近くなるほど修理は難しくなります。

費用は1~2万円台で、所要時間は1~2時間程度です。

修理で対応できない場合は、交換となります。フロントガラスならガラス代と工賃を合わせて5~10万円くらいが相場です。ガラスは特殊加工をしていたり、純正だったり、面積が広かったりするほど高額になります。所要時間は2~6時間です。たとえ交換が終わっても、接着面が乾燥するまでは車を動かせないかもしれません。

車のガラスを修理したり、交換したりするときは、ほとんどの場合において自動車保険を適用できます。ただし、車両保険をつけており、「飛来中または落下中の他物との衝突」が補償内容に含まれているのが条件です。

また、免責金額を設定していると、その金額までは自己負担となります。交換に10万円かかっても、免責金額が5万円なら支払われる保険金は5万円です。

なお、飛来中または落下中の他物との衝突によって自動車保険を適用すると、翌年の等級が1つ下がり、1年間だけ事故あり係数が適用されてしまいます。つまり保険料が高くなるのが難点です。等級が高かったり、保険料が高額だったりするほど、割増率は大きくなります。

保険会社では、自動車保険を適用したときに翌年の保険料がいくらになるか、前もって試算してくれるはずです。自己負担とどちらがお得なのか、よく考えてから適用しましょう。

ちなみに、飛び石は自分の車で跳ねる場合もあれば、ほかの車から跳ねて当たる場合もあります。後者でも、相手に賠償してもらうのは難しいでしょう。飛び石はどこから飛んできたのか特定しづらく、特定できても故意ではなく不可抗力だからです。当たったときは気づかなくても、日数が経ってから傷が大きくなる場合もあります。

飛び石は完全に防げるものではありませんし、道路から小石を除去するのも不可能です。ただし、確率を低くする方法はあります。

飛び石は前を走る車から当たるのがほとんどです。車間距離を空ければ、飛び石があっても車に当たりづらくなるでしょう。特に小石が溝にはまりやすいトラックなどの大型車とは車間距離を空けたいところです。スタットレスタイヤも小石が溝にはまりやすく、冬場から春先にかけて雪の無い路面を走るときは、注意したほうが良いかもしれません。

また、高速で走っているときも飛び石の勢いが強くなり、当たったときの衝撃が大きくなります。郊外や高速道路を走るときは意識して車間距離を空けましょう。

まとめ

飛び石で車のガラスに傷ができても、車検では明確な基準がほとんど無いため、検査員の判断で合否が決まります。基本的に運転手の視野を妨げると判断されたら合格できません。ガラスの傷は、自分でリペアキッドを使ったり、業者に頼んだりすれば修理できますが、傷の状態や大きさによっては交換が必要になります。