車は大切な資産の一つです。ご家族が亡くなられて所有されていた車を相続することになった場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。
相続による車の名義変更は、一般的な車の名義変更よりも複雑です。突然訪れてしまうことの多い【車の相続】について、こちらのページでは相続する時の名義変更に必要な書類や、名義変更の手続きの方法をご紹介します。車の相続時の注意点などもあわせて解説し、お悩みの方も多い不明点も解消していきます。
車の相続 名義変更は必ず行いましょう
親族が亡くなられて、車を譲り受けた家族が名義変更せずに車を使用していると、後に面倒なトラブルが発生しやすくなります。
車の相続をして名義変更をしていないと起こるトラブル
名義変更の手続きを先延ばしにしたまま放置し乗り続けていることで起こるトラブルがあります。まず先延ばしにしていて数年後に車を売却・廃車しようと考えた時にはすべての相続人の必要書類が揃わず、名義変更ができないというトラブルは起こりやすいようです。また、相続人が引っ越しで本籍地が遠くなってしまうと、本籍地でしか必要書類を揃えることが出来ないこともあったりと、書類の取り寄せに手間がかかり、手続き完了までの日数が異常にかかってしまうこともあります。
相続後に名義変更を怠ったことでデメリットしか発生しないのです。相続による車の名義変更は、可能な限り早めに行いましょう。
車の所有者の確認と相続人について
車の名義変更をするには、まず車の所有者の確認が必要です。所有者は車検証の所有者欄に記載されているので車検証を確認します。
所有者欄に、故人の名前がある場合は、普通自動車は相続人全員の共有財産となりますので、相続人で話し合い新所有者を決めます。複数の相続人がいる場合は、相続人の中から新所有者を決め、その人を代表相続人とします。
車の相続の権利が発生するのは、故人の配偶者と第一順位である故人の子供、第二順位である故人の父母、第三順位である故人の兄弟姉妹となり、第三順位までの相続人が、被相続人より先に亡くなられている場合は代襲相続となります。
また相続人が一人のみの単独相続という場合もあります。例えば、所有者である故人の父母と祖父母が亡くなっており、故人が婚姻しておらず兄が一人いた場合は、兄一人のみの単独相続となります。
相続による車の名義変更の方法
では、車を遺産として相続した場合の、車の名義変更を行う方法について詳しくご紹介していきます。複数の相続人がいる場合と、単独相続の場合で必要となる書類の内容が異なります。
複数の相続人がいる場合 名義変更に必要な書類とは
相続人が複数いる場合の名義変更の必要書類は、以下7つです。
必要書類の内訳
- 車検証(自動車検査証)
- 被相続人の戸籍謄本または除籍謄本 ※被相続人の死亡の事実を証明する書類
- 被相続人の戸籍の全部事項証明書 ※または相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 代表相続人の印鑑登録証明書 ※発行から3か月以内のもの
- 代表相続人の実印の準備 ※または委任状に実印を押印したもの
- 車庫証明書
遺産分割協議書について
遺産分割協議書とは、相続人全員から相続の話し合いが行われ合意が得られた証明になります。
相続人が複数いて、代表相続人を決めてその代表者が名義変更手続きを行う場合必要です。
すべての相続人による住所氏名の記入と、実印の押印が必要です。
後々のトラブルを防ぐために相続人全員分を作成し各々で保管しておくことをおすすめします。
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単独相続の場合 名義変更に必要な書類
単独相続する場合の名義変更の必要書類は、以下6つです。
必要書類の内訳
- 車検証(自動車検査証)
- 被相続人の戸籍謄本または除籍謄本 ※被相続人の死亡の事実を証明する書類
- 被相続人の戸籍の全部事項証明書 ※または相続人の戸籍謄本
- 相続人の印鑑登録証明書 ※発行から3か月以内のもの
- 相続人の実印の準備 ※または委任状に実印を押印したもの
- 車庫証明書
車庫証明書について
車庫証明書は、新所有者の車の保管場所を管轄している警察署で、概ね1か月以内に取得したものが必要です。
ただし、被相続人と代表相続人が同居家族で車の保管場所に変更がなければ、車庫証明書は不要です。
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必要書類がそろったら運輸支局へ
必要書類が揃ったら、運輸支局で名義変更手続きを行います。
運輸支局で『手数料納付書』、『自動車税・自動車取得税申告書』、『申請書』を取得します。
印紙の販売窓口で名義変更の登録手数料を支払い、印紙を購入したら手数料納付書に貼り付けます。
あらかじめ揃えた書類と手数料納付書、自動車税・自動車取得税申告書、申請書、を窓口に提出し、不備がなければ新しい車検証が交付され名義変更手続きが完了します。
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相続による車の名義変更 書類を揃える時の注意点
相続による車の名義変更手続きで、書類を揃える時に見落としやすい注意点があります。
見落としたまま運輸支局へ出向き手続きを行っても、書類不備で出直すことになりますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
相続人の姓名に変更があった場合
相続人の姓名が婚姻などで変更されていると、必要書類が追加となる場合があります。
例えば、被相続人の戸籍の全部事項証明書を発行して家族構成の証明とした時に、相続人Aの姓名が全部事項証明書には旧姓で記載されていて、相続人Aが本籍を移すために除籍していた場合、姓名が変わった履歴が載らないことがあります。この場合、遺産分割協議書に記入されている姓名とは異なるため、別途姓名の変更履歴が確認できる書類(相続人Aの戸籍謄本、または姓名の変更が記載された住民票)が必要となります。
これは、相続人Aが代表相続人であってもなくても必要な書類です。
相続人が相続放棄を希望される場合
相続人の中に相続権放棄を希望する方がいる場合は、家庭裁判所で相続放棄の手続きが必要です。家庭裁判所で申請後、『相続放棄申述受理証明書』を発行してもらい運輸支局へ持参します。
また、相続放棄をされると原則撤回ができません。
例えば、故人が亡くなられて家族が車の相続をすることになり、相続人は配偶者である妻と子供2人とします。
相続権はその3人にありますが、子供2人が母に多く相続して欲しいと2人とも相続を放棄しても、母の単独相続にはならず、被相続人の父母(父母が亡くなられてる場合は兄弟姉妹)と母に相続権があることになりました。相続で分与される内容はその相続人の中での話し合いになりますので、相続放棄は簡単に手続きをせず専門家への確認が必要です。
相続人に未成年者が含まれる場合
未成年者は遺産分割協議ができないため、相続人に未成年者がいる場合は特別代理人を立てる必要があります。
特別代理人は原則親権者が立つことになりますが、車の相続で未成年者の父母にも相続権があった場合、どちらも相続人になり利益相反行為となるため、父母が特別代理人になることはできません。第三者の立場に立つ人物を家庭裁判所の審判で決め、特別代理人の証明書を発行します。遺産分割協議には特別代理人が参加し、代理人の住所氏名の記入と実印の押印をします。
自動車の相続 故人の車を相続する方法についてのまとめ
車の遺産相続手続きは時間がかかったりして大変そうという理由で、車を放置してしまったり、名義変更されずに使用される方がいます。
先延ばしにしている間に車の価値が下がってしまったり、放置することで車が不動になってしまい、引取りに高額な費用がかかってしまうこともあります。
車の所有者が亡くなられた場合は不動産などの資産と同じように、車の名義変更手続きを可能な限り早めに行いましょう。