2020年12月、2030年の半ばまでに新車からガソリン車を廃止するというニュースが流れました。
あくまで目標としているという内容ですが、このニュースを見て驚いた方もいることでしょう。
経済産業省が掲げているこの目標ですが、一部の報道では誇張され、絶対にガソリン車を廃止するという文言に変換されているなどの誤解があるようです。しかしガソリン車を廃止するという取り組みは進んでおり、今後はガソリン車ではなくEVやHVなどの比率が高くなることでしょう。車好きの方であれば、残念な気持ちに思うかもしれませんが、一体なぜこのような目標を掲げているのでしょうか。
またこの目標は日本だけでなく世界中で発表されています。
そこで今回は、ガソリン車を廃止するという取り組みの背景や、世界の動きなどを簡単にご紹介していきます。
なぜガソリン車を廃止するのか?
新しく作られるガソリン車を廃止する背景として、ガソリン車から排出されるCO2の削減が挙げられます。
地球温暖化が進行しているなか、今後も今と同じような生活をしていけばさらに進行は進み、生活をしていくうえでさまざまな弊害が発生することでしょう。現在でもゲリラ豪雨をはじめとする異常気象など、地球温暖化の影響で昔では考えられなかったような災害が発生しています。そして地球温暖化を止めるためには、日本をはじめ世界中の国が対策を行わなければなりません。その対策のなかで日本が掲げている大きな目標が「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」というものです。目標を達成するためには、車からのCO2排出量を減らすもしくはゼロにする必要があります。
ではガソリン車の排気ガスは地球温暖化にいったいどれほどの影響があるのでしょうか。
ガソリン車から出る排気ガスは地球環境にとても有害!
ガソリン車の排気ガスには「CO(一酸化炭素)」「HC(炭化水素)」「NOx(窒素化合物)」が含まれていますが、その他に「CO2(二酸化炭素)」も一緒に排出されています。これらの成分は地球環境に悪影響を及ぼし、特にCO2は温室効果ガスの一種であり地球温暖化を促進させる効果も持ち合わせています。三元触媒を使用し、排気ガスをできるだけ無害な物質に変換する取り組みは行っているものの、有害物質をゼロにすることはできません。
また排気ガス浄化装置はCO、HC、NOxなどには有効ですが、CO2を減らす効果はなくある意味CO2が与える環境への影響が最も高いといえるでしょう。環境に悪いこれらの成分の排出を減らすために、ガソリン車を廃止するという取り組みが進んでいるのです。
ガソリン車のCO2排出量は全体の約2割を占めている
ではガソリン車が排出するCO2の割合はどれくらいあるのでしょうか。
日本が1年間で排出しているCO2は約11億トンです。
その内、輸送部門が排出しているCO2の割合は18.5%であり、年間で約2億トンものCO2を排出しているのです。もちろん輸送部門の中にはガソリン車だけでなく、船や飛行機なども含まれますが、8割ほどは車によって排出されたCO2となっています。
また車の中でも
- 自家用乗用車
- 営業用貨物車
- 自家用貨物車
- バス
- タクシー
- 二輪車
など細かく分けられています。そして最も多くCO2を排出しているのが自家用乗用車であり、その量は約9000万トンとなっているのです。このようにガソリン車が排出するCO2の量はとても多く、ガソリンエンジンの技術は向上したものの、有害物質の排出量を大幅に削減するのは難しいことが分かります。そのためガソリン車の製造を廃止し、今後はEVやHVにシフトチェンジしていこうとしているのです。
ガソリン車廃止に伴う世界各国の動きとは?
ガソリン車を廃止しようという取り組みは日本だけではありません。日本以外にもアメリカや中国、ヨーロッパなど世界各国がガソリン車を廃止するという発表を行っています。
では外国ではどのような目標を立てCO2の削減に取り組んでいるのでしょうか。
海外におけるガソリン車廃止運動の具体的な目標は以下の通りです。
- ノルウェー・・・2025年までに廃止
- スウェーデン・・・2030年までに廃止
- オランダ・・・2030年までに廃止
- ドイツ・・・2030年までに廃止
- フランス・・・2040年までに廃止
- イギリス・・・2030年までに廃止
- スペイン・・・2040年までに廃止
- 中国・・・2040年までに廃止
- カナダ・・・2035年までに廃止
- アメリカ・・・2035年までに廃止
このように世界各国でガソリン車を廃止するという運動が起こっています。目標なので今後変更される可能性も十分にあるものの、将来の車事情は大きく変わることが予測されるのではないでしょうか。
今後注目されるのはEVやHV車!
ガソリン車の製造廃止を目標としている以上、廃止されるのは時間の問題でしょう。ガソリン車が廃止され新たに需要の増える自動車は、「EV」や「HV」といった車となってきます。EVとは「Electric Vehicle」の略で、電気自動車のことをHVは「Hybrid Vehicle」の略称で、電気とガソリンの両方の装置を兼ね備えた車のことを指します。
ハイブリッド車の代表格はプリウスですが、プリウスの人気の高まりによって、現在ではさまざまなメーカーからハイブリッド車が販売され、道路でもよく見る車となりました。そして今後はハイブリッド車のみならず、電気自動車の販売にも力を入れていくのではないでしょうか。現在は三菱のi-MiEVや日産のリーフが有名ですが、今後はさまざまなメーカーから販売が開始されると予測できます。そしてこれらの車が主流となる日も遠くない未来に訪れるのでしょう。
車業界では現在100年に1度の変革期が訪れている
ガソリン車が開発されたのは100年以上も昔の話です。そしてガソリン車の進化は目覚ましく、今では同じ排気量でも昔では考えららなかったようなトルクや馬力を持つ車も多く販売されています。しかし車のニーズが高まり、登録台数も増えている現代においてガソリン車が与える環境への影響を放置できない状態となっているのです。そのためガソリン車を廃止し、電気自動車のようなCO2の排出量が少ない車を販売するように国が施策を行っています。
車業界では100年に1度の変革期とも呼ばれる現代ですが、その影響はメーカーだけではありません。使用するユーザーはもちろんのこと、車を修理する整備工場や板金工場、そしてガソリンスタンドにまで大きな影響を及ぼすのです。
ガソリン車が主流だった現代では、ガソリンエンジンやそれに付随する装置の修理が一般的でした。しかし電気自動車になればエンジンはもちろんのこと、各装置の仕様も大幅に変更され、整備士は常に新しい情報を取り入れなくてはなりません。また衝突軽減装置などの搭載によって、分解整備から特定整備へと整備項目や名称も変更されました。
それに伴い鈑金作業も複雑なものになっています。また電気自動車が普及することで、ガソリンスタンドは減少するでしょう。このようにガソリン車を廃止するということは、車ユーザーやメーカーだけでなくさまざまな職種にも大きな影響があるのです。
そのため今後は積極的に学ぶ姿勢や、いかに新しい技術を取り入れるかが生き残りのカギを握るのではないでしょうか。
まとめ
ガソリン車を廃止するという目標の背景には、ガソリン車から排出されるCO2の影響が強くあります。2030年の半ばまでに達成するという動きは、日本だけでなく世界各国で行われており、ガソリン車が無くなった未来に活躍する車は、EVやHVであると予測されるでしょう。これらの車は電気を主流として走行するため、ガソリン車に比べCO2の排出量が極端に少ないという特徴があります。CO2の排出量を減らさなければならない現代において、ガソリン車の廃止は必要に迫られての判断であると考えられます。またこの目標によって車業界では100年に1度の変革期が訪れており、今後は今までのような働き方では生き残れない時代がやってくるのではないでしょうか。今後は新しいガソリン車の販売は期待できません。
車好きなら残念な気持ちはあると思いますが、新車のガソリン車に乗りたいのであれば早めの乗り換えを行うのも一つの選択肢だといえます。