車に乗っていると、定期的にメンテナンスをしなければなりません。数多くある車のメンテナンスの中でも、重要かつ頻度が多いのがオイル交換です。車検時にオイル交換を勧められる方も多いのではないでしょうか?
車に使われているオイルの種類とオイル交換時期の目安、車検時にオイル交換はするべきなのかについて解説します。
車に使われているオイルとは
車のオイル交換と聞くと、多くの方はエンジンオイルの交換を想像します。しかし車に使われているオイルはエンジンオイルだけではありません。ほかにもブレーキオイルやトルコンオイルなどという、車にとって大切な働きをするオイルの種類があるのです。
まずは、車に使われている3種類のオイルの役割を解説します。
エンジンオイル
車のエンジンが人間に例えたところの心臓だとすると、エンジンオイルは血液のような重要な役割を担っています。
エンジンオイルの役割は、大きく分けて5つです。
1つ目の役割に、エンジンの動きをスムーズにするための潤滑作用があります。エンジンはさまざまな金属部品から成り立っており、エンジンオイルがあることで金属摩擦を減らすことができ、スムーズに各部品が動くのです。
2つ目の役割は、ピストンリング部分の密封作用です。エンジンは、高速でピストン運動を繰り返します。エンジンオイルは、ピストンとピストンリングの隙間を密閉し、ガス抜けを防ぐ役割をしているのです。エンジンオイルが劣化すると密封性能が落ち、ガス抜けを起こしエンジンの出力が弱くなります。
3つ目は、エンジン内の燃焼で生じた熱を冷ます、冷却作用です。エンジン内をエンジンオイルが循環しながら熱を吸収し、エンジンの下のほうにあるオイルパンと呼ばれる部分で冷やされます。
4つ目の役割は、エンジンをクリーンに保つための、洗浄分散作用です。エンジン内で発生する汚れに、エンジンオイルが吸着することできれいなエンジンを保てます。
最後に5つ目は、エンジン内で錆が発生しないようにするための、防錆作用です。エンジン内には、錆の原因となる水分や酸が発生します。エンジンオイルの防錆作用で、エンジン内の錆や腐食を防ぎ、エンジンを長持ちさせられるのです。
ブレーキオイル
ブレーキオイルとは、ブレーキを作動させるためのオイルで、正式名称はブレーキフルードです。
ブレーキを踏むとブレーキオイルに圧がかかり、その圧でブレーキパッドが押されてブレーキが作動する仕組みになっています。
作動油であるブレーキオイルは、潤滑油であるエンジンオイルとは異なる性質を持っているオイルなのです。
トルコンオイル
正式名称は、オートマチック・トランスミッション・フルード(ATF)でオートマオイルとも呼ばれています。このトルコンオイルは、AT車専用のミッションオイルです。AT車の場合のみ交換となります。
トルコンオイルもブレーキオイルと同じく作動油に分類され、ギア変更時に円滑な動きとパワーを伝えるために働きます。
トルコンオイルが劣化すると、変速時のショックが大きくなる不具合が発生するので定期的な交換が必要です。
オイル交換の目安
車に使われているオイルは、定期的な交換が必要です。オイルや、車の状態によって交換頻度の目安が異なります。
走行距離・期間から、一番早い時期を目安に交換するのが良いとされていますので、それぞれの目安について見ていきましょう。
お近くの専門業者に相談するのもおすすめです。
距離を目安にする
エンジンオイルの場合、ターボで5,000km、NAで10,000kmが目安です。ブレーキオイルの場合は20,000km、トルコンオイルの場合も20,000kmが目安となります。
もちろん車種によっても異なり、とくにトルコンオイルの場合、最新の車であれば10万kmまでは交換不要としているものもあるのが現状です。
期間を目安にする
エンジンオイルは6ヶ月ごと、ブレーキオイルは2〜4年ごと、トルコンオイルは2年ごとの交換が目安となっています。
短期間で長距離を走った車の場合は、期間を目安に交換するのではなく、走行距離目安での交換が適切です。
オイルを交換しないとどうなる
車のオイルは、どれも欠かすことのできない大切なものです。オイル交換をしないと、車のあらゆる部分に不具合が発生します。
エンジンの不具合
エンジンオイルを交換しなかった場合、当然ながらエンジンに不具合が発生します。車にとってエンジンは、人間に例えたところの心臓です。エンジンが動かないと、車は動きません。
エンジンオイルには、エンジン内で燃焼した際に出る汚れを吸着してきれいに保つ役割があると先に解説しましたが、交換をしないとエンジンオイルが吸着した汚れでドロドロになり、逆にエンジンに汚れをつけてしまうことになるのです。
汚れたエンジンオイルのまま使用すると、エンジン内の部品をスムーズに動かすこともできなくなりますので、部品同士の摩擦が増え、エンジンの性能を十分に発揮できなくなります。
その結果、燃費が悪くなるほか、最悪の場合エンジンが故障し車が動かなくなります。エンジンオイルは、早めを意識して交換するようにすることが、車を長持ちさせるコツだといえるでしょう。
ブレーキが正常に動作しない
ブレーキオイルには、空気中の水分を吸収するという性質があります。余分な水分を吸収したブレーキオイルでは、ブレーキパッドを押す圧が伝わりにくくなり、ブレーキの効きが悪くなるのです。
車のブレーキの効きが悪くなるということは、減速時や停止時の事故につながり、運転手や同乗者の命にも関わってきます。
安全に車に乗る上で、ブレーキオイルの定期的な点検と交換は必要です。自分で点検する場合には、ブレーキオイルの色で判断するとよく分かります。
新しいブレーキオイルの色は薄い黄色をしていますが、空気中の水分を吸収すると、次第に茶色く濁る特徴があります。
燃費や加速が悪くなる
トルコンオイルの交換をしなかった場合、燃費や加速が悪くなります。スムーズな発進ができなくなるので、車の乗り心地にも関わってくるでしょう。
最終的にオートマチックミッション自体が故障してしまった場合は、高額な修理費用がかかることとなるので注意が必要です。
さらにトルコンオイルを長期間交換していなかった場合、突然新しいトルコンオイルに交換すると逆に不具合が出てしまうこともあります。繊細な部分のオイルですので、定期的に交換できていなかった場合は、整備士や専門家と相談しながら交換するようにしてください。
車検時にオイル交換すべきか
車検時には、必ずといっていいほどオイル交換も勧められます。先ほども解説しましたが、ブレーキオイルやトルコンオイルは約2年ごとに交換するのが目安ですので、車検時に交換するのも、交換を忘れないために有効な手段だといえるでしょう。
しかし車検時にオイル交換をすると、工賃や整備費、オイル自体の価格が高めに設定されているため、オイル交換にかかる費用が高くかかってしまうことが多いです。
このことから、車検時に一緒にオイル交換をするのではなく、必要なタイミングでオイル交換をするほうが、費用的にも車にとっても良いといえます。
ちょうどオイル交換のタイミングが車検である場合は、車検を受ける前にオイル交換をするというのも、費用を抑えるという面では有効です。
車検時にオイル交換をしなくても車検自体は通りますので、車の状態やオイル交換の目安を考慮して、オイル交換するかしないかを決めましょう。
お近くの専門業者に見積もりを依頼するのもおすすめです。
まとめ
車の外観からはオイルの状態を確認できないため、つい忘れがちになってしまうオイルですが、車にとってとても重要なものです。
車検時のオイル交換は必須ではありませんが、車の寿命にも関係しますし、なによりも安全性に関わってくる部分ですので、正しい間隔で定期的にオイル交換をおこなうようにしましょう。